今観ておかないと、多分一生観ないであろう映画「オトシモノ」を鑑賞。
リングあたりから、ジャパニーズホラーが活気づき、色々な作品が世に送り出されたました。
しかし流行は過ぎ去っていくもの。
ここ最近はジャパニーズホラーは一時期に比べ沈静化しつつあるわけですが、
そんな中、かつホラーの季節である夏もすぎた、この10月に送り出されたのがこの作品。
まぁ身もフタも無い言い方すれば、乗り遅れちゃった感が否めない映画なわけですが、
とはいえ、観てみないことには評価は下せないわけです。
もはや色んな映画で色んなネタがやりつくされた今、どんな手法で我々を怖がらせてくれるのか。
ビデオ・一軒家・携帯電話・バブルスライムを出す高島政伸と恐怖アイテム(最後は単なる見所ですが)は作品ごとにあるわけですが、
このオトシモノでは、タイトルどおり”落し物”なわけです。
とある駅周辺で定期やブレスレットといった落し物を拾った人たちが、
「返して・・・」という不気味な声とともに、
どんどん行方不明になったり死んだりとしていくわけですよ。
犠牲になった人の中には、駅の落し物係にきちんと届けてあげてる人もいるんですが、
これは直接落とした自分に届けろということでしょうか、超常現象とはいえ何様でしょうか。
正直が馬鹿を見る時代を反映し、我々に何かを訴えたいんでしょうか。
あるいは、落とした人間はどこのイカレたマザーファッカーかもわかんないから、触らぬ神にタタリ無しダヨ!とでも言いたいんでしょうか。
どっちにしろヒデェ話だな、おい。
ちなみに犠牲者が出ると、その人が拾って駅に届けた落し物は、こつぜんと姿を消し、
またどっかに落ちていて、それを誰かが拾うとまた・・・って流れになっているようで、
なんか当たり屋みたいで壮絶に性質悪いです。持ってかえれや。
さて、こんなバカボンのパパの理屈並みに納得いかない理由で犠牲者が色々出てきて、
ついに主人公である女子高生の妹にまで及び、
彼女はそれを救うべく、調査に乗り出すわけです。
そんな女子高生が必死こいてる様とは対照的に、俺はそれに反比例してにやつくわけですが。
なにせ見事に数々のメジャーなジャパニーズホラーのお約束を踏襲していて、素直に怖がれないわけですよ。
まず一つとして、警察が信じてくれずアテにならないってのあります。
ジャパニーズホラーの世界の警察では、採用資格に霊を信じない人とかムーを読まない人とでもあるのか、
この映像に何か変な影が見える!とか主人公が必死に訴えても、
んなわけないだろ!馬鹿馬鹿しい!といって全然取り合ってくれないのが、お約束となっています。
ある意味、観客側の”信じてやれよ!”って感情を逆撫でするような感じで、憎まれ役ってところなんですかね。
当然、このオトシモノでも、警察は役に立ちません。
まぁ考えてみれば、そんな霊的な話を聞いて、そりゃ大変だ!と動く、羽毛のように軽い腰の警察もアレですけど。
でも行方不明者の少なくとも5人は同じ人物の定期を拾って駅に届けており、
それに気付かない警察も相当アレだと思います。
さらにお約束のもう一つ。
定期の落とし主であり、怪奇現象の原因と思われる霊というか怨霊の八重子が、
例によってロングヘアーの細身女性だったりするんですよ、これが。
さすがにこの手の怨霊は、リング・着信アリ・呪怨etc・・・で、もうお腹一杯な感があります。
貞子にいたっては、萌えキャラにされている始末。
オタク。それは神や悪魔すらも愛でる人種。
なんで、ロングヘアーの女性にするにしたって、ここいらでゲッター1みたい体型なのが出たっていいと思うんですが。
まぁ、これは貞子のインパクトとか、さかのぼれば怪談話とかに由来したりして、なかなかジャパニーズホラーが抜け出せないものではありますね。
とはいえ、この映画ではさらにひねりがあるわけです。
さすが、このお寒い時期に公開するジャパニーズホラーなんだから一筋縄ではいきません。
なんと定期の落とし主である怨霊?八重子も犠牲者の一人にすぎなかったのです!
映画のクライマックス、主人公は八重子が死んだと思われる鉄道のトンネルに行くわけですが、
そこには洞窟が隠されていて、なにやら異形の偶像が祭られていたのです!
今回の一連の現象は、この異形の偶像(またはそれに関わる何かの儀式?)が原因とわかるわけです!
これは新しい!なんというドンデン返し!すげぇ!すげぇよ!すげぇ意味わかんねぇ。
まぁ、トンネルに何かあるってのは、伏線はあるわけなんですけども、
この異形の偶像はなんなのかってのは、劇中に説明は一切行われません。
詳しくはムーを読めって事なんでしょうか。
さらにその伏線に関わる重要人物が、板尾創路ってところが
胡散臭さを倍増させます。
俺みたいな、ごっつええ感じとか、ガキの使いの笑ってはいけないシリーズ好きとしては、
板尾がスクリーンに存在するだけで、何かを期待して伏線どころではありません。
さて主人公が洞窟に侵入し、なにやら積み重なってる物体の上に、妹が倒れているのを発見します。
犠牲者は軒並み死んでる中、この妹は五体無事でご存命。ナイスご都合主義。
もちろん説明はありません。理由をつけるとするなら、ハッピーエンドフラグだからでしょうか。
で、洞窟から脱出となるわけですが、ここからジャパニーズホラーからB級ホラー洋画のノリになってきます。
なんと妹が倒れてたのは、積み重なった屍体の山!
そして姉妹が逃げようとすると、それらが起きて追いかけてきます!
数にして百人近くはいそうなんですが、かなり死んで時間が経っているだろうに腐敗してないのはご愛嬌。
洞窟を逃げる姉妹!色々あって、洞窟より脱出!
でも生ける屍の群れは、洞窟からトンネルにあふれ出てきます!
姉妹以外に、鉄道関係者の運転手が仲間に居て、列車でトンネルを脱出するんですが、
まぁ気持ちの良いくらいにゴリゴリぶちゅぶちゅと、
カーマゲドンとか馬鹿小学生のやるGTA並に、生ける屍を轢いて行きます。
メリケンならイヤッッフゥゥゥゥ!と奇声をあげるような場面ですが、
そこはさすがにジャップなんで姉妹・運転手ともに沈痛な面持ち。
ハリウッドリメイクしたら、すげぇ面白そう!
ちなみにラストの後日談で、運転手が問題のトンネルを爆破してお縄になるんですが、
そこもハリウッドリメイクのしがいがありそうです。
ホラーでもなんでもなくなりそうですけども。
とまぁ、ツッコミ甲斐がありまくりな作品であるわけですが、
一緒に観にいったホラー映画初心者の知人に感想を聞くと、普通に怖かったらしくビギナーには楽しめるようです。
さらにジャパニーズホラーを飽きるほど観た人間に関しては、突っ込んでも楽しめるため、
何気にホラー初心者から上級者にまで色んな意味で楽しめる作品です。
結構ネタバレしちゃってるんですが、それでも触れてない部分とかあるんで、
機会と飽きるほどの時間と金があるなら、鑑賞してはいかがでしょう。
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